EGOTOPIA

現地時間、１０月１８日午後１１時過ぎ。ホテルに戻ってきたあたしは、熱いシャワーを浴び、買ったばかりのＴシャツを着て、地下にあるバーに向かった。

↑もうこの時点でワインが数本入ってるけど、まだ寝れない。旅を終わらすわけにはいかない。

Ｔシャツは「HOLLSTER」という店で安売りしていたシャツ。「HOLLSTER」の店内は香水がこれでもかってくらい香水がぶちまかれているので、売ってる商品もその匂いがプンプン。酔ってなきゃ着ない。

パスポートを前のポケットに収納。必ずここにしまうようにしないといけない。腰のポケットじゃ、いつ落とすかわからないから。落し物をよくするので、前のポケットでもかなり不安。

バーの入り口には、数日前に見かけたゴツイにーちゃんじゃなくて、小柄の男が立ってた。まぁ、小柄でも柄がいいとは思えない風貌なんだけど。そいつにパスポートを見せてバーへ入店。男は「えんじょい」とかなんとかって言ってたな。

中は映画によく出てきそうなアメリカンスタイルのバー。予想していたスペースよりずっと広い。あたしのバイト先を知ってる人は、それと同じかそれ以上と思ってもらうと想像しやすいかも。暗がりでバーカウンターがウニョーっと長く、ピンボールはないけどテレビゲーム機が何台置いてあった。奥ではなにやらパンク系？ラウド系のバンドがミニライブをやってる。カウンターでコロナを買い、奥へ行くと、全く知らない歌をバンドがシャウト中。ホテルの地下でこんなボリューム…やっていいんだ。観客は２０人ほど。地元のアマチュアバンドか何かなんだろうね、これ。

サラっと見た後、カウンターでコロナを飲んで人間観察。すると、バーテンの女が話しかけてきた。英語はよくわかってないし、うる覚えなのでここからは日本語を使って会話形式に。

バーテン
「ハロー」

あたし
「ハァイ」

バーテン
「今夜は楽しんでる？」

あたし
「今来たばっかり」（just now程度の返し）

バーテン
「初めてかしら」

あたし
「そうだよ、今日が初めて」

バーテン
「旅を楽しんでね」

くぅー、かわいい！！あたしの英語力が足りないせいで、会話を持たせられないのが悲しいけど、返ってスマートに会話出来たかも。いらぬ事は言わないっていうか（言えないだけだけど）。

あっ！！

入り口近くのカウンターに見覚えある顔を２人発見。数日前、あたしの部屋で一緒に飲んだニュージーランド人を発見。へいへい！！

ニュージーランド人Ａ
「おぉ！」

ニュージーランド人Ｂ
「ジャパニーズ！」

大きな声で「日本人！」って叫ぶのはやめてもらいたいんだけど…ナハハ。一緒に飲もうぜぇー。

ニュージーランド人Ａ
「いつ帰るんだ？」

あたし
「明日だよ」

ニュージーランド人Ａ
「え！俺らもだよ」

あたし
「ラストナイト！エンジョーイ！」

ニュージーランド人Ａ
「いぇー」

コロナが一本、あたしの前に来た。ニュージーランド人がおごってくれたらしい。センキュー。

ニュージーランド人Ａ
「お前、ロビーの隣にある店に行ったかい？上の階のだよ」（upstairsの店と言っていた））

ホテルを入り口から入ると、昼間は閉まっているエリアがある。それがフロントの手前にあって、夜になるとオープンしているらしい。あたしはそこが何屋なのか、全くわからなかった。

あたし
「え？店？ looks like ABA STORE?」
（ホテルの入り口付近にはコンビニがあるので、そこかい？みたいな）

ニュージーランドＡ
「違うよ。ちょっとタバコ吸いに行こうぜ」

タバコを吸う場所が、丁度バーの正面にある。あたしは毎日そこでタバコを吸っていて、バーに行こうか、もう少し横にある日本食の小料理屋（居酒屋）に入ろうか、いっつも迷ってた。結局最終日まで利用しなかったけど。

ニュージーランド人Ａ
「ほら、あそこだよ」

何、あれ。昼間は何も無かったと思う場所に、赤いカーテンがかかってて、入り口にＳＰみたいなのが立ってる。男女が行き来していてとても怪しい。

あたし
「何、あれ」

ニュージーランドＡ
「セクシーレイディがいるらしいぞ」

あたし
「ホント？病気になるやつ？」

ニュージーランドＡ
「落ち着けよｗ」

あたし
「君は行ったの？」

ニュージーランドＡ
「いいや、まだだ。後でね」

あたし
「やめておいた方がいいんじゃないの？」

ニュージーランドＡ
「最後の夜だよ。エンジョイしろよ」

あたし
「さぁ、戻ってもっと飲もうよ」

すぐに行くから先に戻っててと言われ、バーに戻ると、ニュージーランド人Ｂの周りには男女がワンサカいた。まさか全員友達なわけじゃないだろう。後ろを振り返ると、ニュージーランドＡはタバコを吸ってる女子に話しかけてる。パーナン中らしい。

ニュージーランドＢ
「へい、日本人。飲もうぜ」

あたし
「おぅ！この人達、君の友達？」

ニュージーランド人Ｂ
「そうだよ」

絶対に嘘だろ。ナイスチューミーチューってさっき言ってたぞ。何かのキッカケでワイワイしゃべってんだろう。あたしも何人かに「日本人？」って聞かれた。そうだ、俺は日本人だぞ！！

ニュージーランド人Ａが帰って来た。今度は店内の女子に声をかけてる。うーむ、女が大好きらしい。あたしはニュージーランド人Ｂが紹介した、痩せてる白人と会話中。カルフォルニアから来たらしい。回りから「スリム・シェイディ」って言われてる。そんな失礼な事を言っていていいんだろうか。可哀想なヤツだ。たしかに、ガリガリボーイだけど。

また、スパニッシュの男が彼女らしき女を連れてきて、「コンニチハ」とかを発音させている。やめてくれ、ここで日本語教室は開きたくない。

あたし
「コンニチハ」

女
「コンニチハ」

あたし
「ヤマノテセンデス」

女
「What？」

あたし
「ヤマノテセンデス」

女
「アマノケデス」

ラーメンズのコントネタをやってみたんだけど、全くダメ。個人的には爆笑で笑いを我慢するのに必死だった。そして、なぜか気に入られたみたいで、なんかガッツリ囲まれてる。

何人か不明
「★×□○★×□○★×□○」

何か聞かれてるんだけど、全くわかんない。それって英語？

アメリカで滞在してた時、その家に住んでる連中には「漢字」がウケたっけ。名前を漢字にしてやるのがもの凄くウケる。名前は？何？トニー？ト、トニーはどう当て字にするんだ？

戸仁井

斗二猪

ノートの切れ端で「斗二猪」と書いて渡すと、「俺、俺」と仲間に見せに行ってる。単純なヤツらめ。

タバコを吸いに外へ行くと、深夜２時くらいなのに人が沢山いる。あ、またニュージーランド人Ａが女にしゃべりかけてる。本当に好きだなぁ。しかし、相手にされてない様子。

やっべ、タバコが切れた。あいつにもらおう。

あたし
「よー、タバコがなくなっちゃったんだ。タバコもらえる？」

ニュージーランド人Ａ
「俺もないぞ。買いに行こう」

あたし
「うんうん。セブンイレブンで売ってる」

ニュージーランド人Ａ
「れっつごー」

ＡＢＣストアは閉店しているので、もう少し先のセブンイレブンまで２人で歩いた。この辺は何がどこにあるのか、５日間でバッチリ覚えたので、酔っ払ってても全く平気。

あたし
「さっきの女、何人？」

ニュージーランド人Ａ
「アメリカ人」

あたし
「どうだった？」

ニュージーランド人Ａ
「（乳・腰・尻のラインを両手で作る）ハハハハ」

相当女が好きらしい。

セブンイレブンに到着。深夜なのに割と込んでた。
タバコを買うにはＩＤが必要なのでスムーズにパスポートを提示。前のポケットにしまう。

あたし
「君は？」

ニュージーランド人Ａ
「のー」

あたし
「え？」

ニュージーランド人Ａ
「お前のタバコ」（を買いに来たんだろ的）

え？付き合ってくれたわけ？めちゃくちゃいいヤツじゃないか、君は。タバコいるだろ？おごってやるよ。

あたし
「What kind of cigarette are you smoking?」

ニュージーランド人Ａ
「せいむ　ゆー」

あたし
「マルボロね、おっけー」

「What kind of～」は日本で覚えて練習しておいた。思わぬ所で使えた。伝わってるかどうかは不明だけど。これこそシチュエーションの成せる業。

戻ってタバコを仲良くプカー。

ニュージーランド人Ａ
「日本に彼女はいるのか？」

あたし
「いるよ」

ニュージーランド人Ａ
「何人？」

あたし
「え？」

ニュージーランド人Ａ
「３人か？４人か？」

あたし
「１人だよｗ　なんなんだよｗ」（What do you say）

ニュージーランド人Ａは１人でニヤニヤしてる。何なんだよｗ　まさか、ゲイだと本気で思ってないよな。嘘言っていると思ってないよな。アメリカでお世話になったデイブさんちの息子・デニスもそういうヤツだったよな。ＭＢは単身でアメリカに行った時、デニスから「俺が日本に行ったら、何人とヤレるんだ？」と言っていたらしい。ＭＢの結婚式があるなら、その時に来日する事になる。ヤツは一体何しに来るつもりなんだと、ＭＢと２人で笑った。ニュージーランド人Ａもそういうヤツなんだろう。ただし、デニスと違う所はニュージーランド人Ａがモテそうに無いって事。デニスは現地に４人も彼女がいたからさ。

タバコを吸い終わり、バーに戻る。タバコを吸いたい時は外に出て吸う。こういう吸い方だと、無駄にタバコを吸わないでいい。タバコを吸う人間が他にいれば、「連れション」ならぬ「連れタバコ」。女のトイレと一緒。その時はボーイズトークも弾むんだろうに。

バーに戻ると、男だらけになってた。ニュージーランド人Ａは男達に「あれ？レイディは？」と聞いている。さっきまでいた女達は誰かの連れだったか、お持ち帰りされたんだろう。

もう３時だから、そろそろ寝た方がいいかもしれない。こいつらはまだまだ飲む気満々って感じだ。

え…

なにやらカウンターに茶色の飲み物が注がれている。なぁ、それってウイスキーとか言うのじゃないですよね。それをクイッとイッキするヤツじゃないですよねぇー。

しらーん顔して脇に移動しようとすると、

ニュージーランド人Ｂ
「へい！じゃっぱにーず！！」

やっべ、速攻で見つかった。

ニュージーランド人Ｂ
「かもーん」

はいはい、やりますよ。知らないだろ、あたしが酒飲めるの。ぶち殺してくれるわ！！

あたし
「おーけー」

（ちあーず）かんぱーい！！

ゴックリ

うへ、相変わらずウイスキーはウイスキー。どこで飲んでも同じ味。本来、このように飲むべき物じゃないんだ。タモリさんに怒られるぞ（タモさんはウイスキー愛好家）。

あたし
「ねくすと！」

ニュージーランド人Ｂ
「ムサスィ！ムサスィ！」

宮本武蔵じゃなくて、Ｋ－１の武蔵の事を言っているんだろう。やめてくれＹＯ！！

あたし
「武蔵　対　レイセフォーだ」（Hey,Ray Sefo.come on!）

何人か不明
「トリプルエイチもいるぞ」

それはプロレスラーだろ、何でもありかよｗぎゃはははは

そして、ムサシ（あたし）、レイセフォー２人（ニュージーランド人ＡとＢ）、トリプルＨ（アメリカ人だと思う）、スリム・シェイディの異色マッチがスタート。

あたし
「ごーとぅーへーる！！」（Go to hell）地獄に落ちろー　キィー！！

ゴックリ

うえぇー、コロナ、コロナ。口の消毒しなきゃだ。ランディとウイスキー・イッキを日本でやっておいて良かった。ランディはコーラを用意してくれたけど、ここではチェイサーらしき物は一切用意してない。これは適当な所でやめないと死ぬ。

次はあたしがおごる事にした。それで退散しよう。

あたし
「ねくすと」
「らいずあっぷ」（グラスを上に）
「ちあーず」

ゴクリ

ぐうえぇ～。

飲み干した後は、すぐさまタバコを吸いに。逃げた。

ニュージーランド人ＡとＢがすぐに追いかけてきて、タバコを吸いながら、「あそこ、あそこ」と、赤いカーテンを指を指してる。

あたし
「もう寝るよ」（No No　I have already slept.）

ニュージーランド人Ａ
「ラストナイトだぞ、行こうぜ」（hey,come onくらいだったと思う。）

あたし
「いくら？」（もちろん「How much」だ）

ニュージーランド人Ｂ
「わかんない」

あたし
「だめだめ、ハイプライスだぞ、きっと」

ニュージーランド人Ａ
「待ってろ。聞いてくる」（←みたいな感じ）

客引きには見えなかったけど、さっきからずっとウロウロとし、いろんな人に声をかけている男がいた。そいつにニュージーランド人Ａは話しかけて、なにやら聞いている。あぁ～、風俗とか行った事ないのに、外国でデビューすんの？イヤだなぁ。

あたし
「ねぇ、あそこってノーセックス？」

ニュージーランド人Ｂ
「わかんない」

お前はさっきから何なんだよｗ　I don't knowばっかりで。

あたし
「あそこで病気にならないかっての」（Will you become sick there？）
「病気だよ、病気」(ill! ill!)

ニュージーランド人Ｂ
「落ち着けよｗ」
「大丈夫だ。恐れるなｗ」（fearを言われた気がする）

ニュージーランド人Ａ
「よー、５ドルだってよ」

絶対に嘘だろ。そんな破格の風俗、聞いた事ないぞ。風俗じゃないのか？てっきりそっちかと。なんだよ、５ドルならただの飲み屋じゃん。カーテン一枚の入り口だから、あたしゃてっきり危ない場所かと。
いや、絶対に５ドルじゃおかしい。そんなに安いなら、もっと出入りがあってもいいはずだ。

ニュージーランド人Ａ
「さぁ、行こう」

あたし
「んー、よし」

決心を固める。基本的に、こいつらは超いい奴らだ。楽しい夜をあたしだってまだ続けたい。
ニュージーランド人ＡとＢと共に階段を登って、赤いカーテン前に。入り口の男にＩＤを見せて中へ入った。

入ると、ん？

なんだ、ここはクラブじゃないか。しかもスカスカ。プライベートエリア（VIPか？）もあるみたい。ここはクラブだ。完全なクラブだ。ニュージーランド人達と酒で乾杯した後、イスに座って休憩。さっきのウイスキーが効いてる。ふぅー。

ニュージーランド人が女のグループを連れてきた。少ししゃべったら帰ろう。もう寝ないとヤバい気がする。

そろそろ記憶があんまり無くて、箇条書きにさせてもらう。

・女と何かのダンスを踊った。
・ニュージーランド人Ａは気持ち悪るがられてた。
・エミネムがかかって盛り上がった。
・気がついたら紙幣が尽きていた。何気に使ったらしい。
・みんなに、絶対に日本へ遊びに来いよと言ったっぽい。
・最後は記憶が無い。

どうやって帰ったかわかんない。
次回、最終回。

つづく。

【→もっといろいろ読む】